世界的に有名なミネラルウオーターの水源地、フランス中部ボルヴィック(Volvic)では、過剰な採水により、地域一帯が危険にさらされています。
かつては水が膝の高さまであり、水車2基を回していたのに、今では水車はなくなり、川が干上がっていることも多いと、ピエール・グロドクール(Pierre Grodecoeur)氏(69)は話しています。
オーベルニュ(Auvergne)地域圏にある村のすぐ近くには、仏食品・飲料大手ダノン(Danone)が所有する、ミネラルウオーター「ボルヴィック」の工場があります。

 

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ボルヴィックの水源枯渇問題

2014年以降、仏政府はダノンに年間280万立方メートル、1リットルボトルで換算すると28億本分の採水を許可しています。
これは、毎秒89リットル近くの水をくみ出していることになります。

ボルヴィックの源泉が湧き出ている工場近くの養魚場では、数か月間全く水が出ないこともあるそうです。

地質学者のロベール・デュラン(Robert Durand)氏によると、ボルヴィックの源泉の平均流量は、1927年の毎秒470リットルから毎秒50リットルまで落ち込んでいるようです。
水不足により木々に覆われた丘陵の湿度が下がり、地域の生物多様性に影響が出ています。

オーベルニュ地域圏クレルモンフェラン(Clermont-Ferrand)にあるフランス国立科学研究センター
のクリスティアン・アンブラール(Christian Amblard)氏は、砂漠化の始まりだと指摘しています。

「この辺りではここ数年、植物や野菜が全く育たない」と、農業を営む男性は述べています。
ボルヴィック周辺の水は不足しており、もはや潅がいには使えないのです。

工場が水をくみ尽くして干上がらせているとの批判に対し、ダノンのボトリング工場長のジェローム・グロ(Jerome Gros)氏は、ダノンは水源の保護に多額の投資をしていると反論しています。

しかし、ボルヴィックの工場は地下100メートルから水をくみ上げており、ここ数年の降雨量は安定しているので、水源の枯渇は天候のせいではないとしています。
バスタブから水をくみ上げて空にしているようなものだ、と地元環境保護グループに所属する地質学者は批判しています。

地下水枯渇問題

地下水枯渇の問題はボルヴィックだけの問題ではありません。
気温の上昇と、米や小麦といった穀物の需要増加によって、世界の地下水は今後数十年のうちに激減する可能性があるという研究結果が発表されています。

私達の食料のほぼ半分が、地球上の温暖で乾燥した地域で生産されています。
そのような所では、穀物に水を供給するために地下水の過剰なくみ上げが行われています。
その結果、帯水層と呼ばれる地下の貯水層の水量が急速に減少しているのです。

最新の研究によると、今世紀半ばには、インド、パキスタン、ヨーロッパ南部、米国西部の広い範囲で帯水層が枯渇する可能性があるそうです。
そうなると、食料供給が打撃を受けてしまいます。
また18億人もの人々がこの貴重な水源を利用できなくなります。

具体的にいつ、どこの帯水層の水が限界に達するのかを予測するため、米国コロラド鉱山大学の水文学者インゲ・デ・グラーフ氏は、1960年から2100年にかけて、地域ごとの地下水の動向をシミュレートするモデルを開発しました。

その結果、カリフォルニア州の農業の中心地であるセントラルバレー、トゥーレアリ盆地、サンホアキンバレー南部では、2030年代には利用可能な地下水がなくなることが分かりました。
インドの上ガンジス盆地やスペイン南部、イタリアでは、2040年から2060年の間に地下水が底をつきます。
米カンザス州、オクラホマ州、テキサス州、ニューメキシコ州の地下に位置するオガララ帯水層南部は、2050年から2070年の間に枯渇する可能性があります。

 

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過去50年で急増した地下水頼みの農地

このような乾燥地域において、過去50年間で急速に農業が発展しましたが、降水量が少なく、川や湖もほとんどないため、地下からくみ上げる水だけが頼りなのです。
グラーフ氏によると、1960年以降、世界各地での過剰な水のくみ上げにより、すでにミシガン湖ひとつ分ほどの水が使われているそうです。
今後は気候変動と人口増加により、地下水の使用にさらに拍車がかかるものとみられます。

オランダ、ユトレヒト大学の水文学者、マルク・ビエルケンス氏は、地下水の減少により、世界の食料供給は打撃を受けるだろうと述べています。
現在、世界の食料生産の40%は地下水を使った灌漑に頼っている状態です。
同氏の試算によると、もし利用できる地下水の量が半減すれば、農業生産高は6%減少します。
人類全体が飢餓状態に陥るわけではなくとも、食料価格には大きな影響が出そうです。

地下水の枯渇によって影響を受けるのは食料だけではありません。
湿地帯の環境破壊や地盤沈下も引き起こされるのです。

2015年の衛星観測による研究では、世界の主要な帯水層の大半(37カ所のうち21カ所)で、水が溜まるよりも速いペースで減少していることが明らかになりました。

NASAジェット推進研究所の水文学者ジェイ・ファミグリエッティ氏は「数多くの研究が、地下水の過剰な利用と、水や食料の安全がとてつもないリスクにさらされていることを指摘しています。問題は、地下水があとどのくらい残っているのかがわからないことです」と、述べています。

12月にサンフランシスコで開催されたアメリカ地球物理学連合の大会でグラーフ氏は、「一番早く危機に見舞われる地域は、水の需要が高く、地表水が不足している場所です」と、語りました。

 

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